何か仕組みを変えたいことがあったとして、それを実行、現実化していくための多くは、お金の動きもそれに合わせて変えなければできません。今回は、松山市のお金がどういうしくみで動いているのか、議員さんはどうやってお金を動かしていくのかについてお話を聞いてきました。
松山市の予算って?
早速ですが、今回は松山市のお金について教えてください。前回の記事でも出ましたが、新たなことをするためには「予算措置」がいるんですね?
まず、全体の仕組みからお話すると、・・・松山市でも、毎年3月議会で、次年度当初予算案が審議されます。議決された予算案に基づいて、松山市役所(行政)が実行します。
とっても分厚い資料ですね。
これは、秘密の資料ですか・・・?
秘密じゃないです。
松山市のウェブサイトにもありますし、誰でも見れます。
これを見ると、「民生費」がダントツの歳出なんですね!民生費って一体なんの費用なんですか?
簡単に言うと「福祉」にまつわるお金のことです。生活保護に関する費用、高齢者福祉に関する費用、障害者福祉に関する費用、児童福祉に関する費用、母子福祉に関する費用。国民健康保険などもここに含まれます。
福祉とは、すべての市民に最低限の幸福と社会的援助を提供するという意味です。
日本国憲法第25条
第1項
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
民生費の説明は、総務省のウェブサイトにある「平成30年版 地方財政白書(平成28年度決算)」の第33図が分かりやすいと思います。地方公共団体は、社会福祉の充実を図るため、児童、高齢者、障害者等のための福祉施設の整備及び運営、生活保護の実施等の施策を行っています。
これらの諸施策に要する経費が民生費です。
松山市当初予算の資料に「子ども医療費助成事業」のことも書いてありますね。
そうです。2020年1月から、中学校卒業まで通院も無料になりましたから、子どもの医療費助成に、年間では8億円くらいの予算増です。
これは、市長公約関連事業を簡潔に説明した資料です。
野志市長は、1番目に子育て環境、子どもの未来を応援するという公約を掲げてくださっていて、それは私の志と同じです。私は、その実現に向けて施策を充実するために、議員の立場から、母の目線や子どもの側に立つ想いで様々な提案や議論をしています。
「子どもの未来を応援する」が一番目に来るんですね!意外です。
それにしても、こうやって数字で見てみると、松山市でも莫大なお金が動いているんですね・・・。
市の財政の話になると、どれも大きな金額だから、事業数と総額をみると、たくさんのお金が使われている~~!と思いますよね。
はい・・・私には、想像もつかない金額です。
議会の一般質問で取り上げましたけど、
先の話題にでた民生費の内の児童福祉費(母子福祉費)に使われている金額は、人口一人当たりに換算してみると、中核市の中では少ない方です。小学校費、中学校費も、です。
残念ながら松山市は、子どもたちの支援を他の自治体以上に取り組むとか、子どもたちの為に独自に市が考えて事業を作るところまでは、できていません。
そうなんですね…。
ただ、松山市でも、入るお金が決まっていますから、使えるお金も限界があります。
常に決まっている事業もあり、また、課題に応じてしなければならないこと、各所から色々な要望のある中から、調整したり、やりくりしたり、様々な面から検討されて議論されて、予算が決まります。
なるほど。
予算を動かすのって、すごく大変そうですね。とくに新しいことを始めることは、周りの理解もいりますしね。
でも大事なことですよね。予算を動かさないと、変わらない。
市民の願いと幸せを、より良く予算に反映させていく取り組みは、議員の大事な役割だと思っています。
予算に反映させるために
例えば、今年からはじまった「子ども医療費」に関しては、どうやって予算を動かしたのですか?
政治は、合意で動きます。どうしたら、合意形成に持っていけるのか、あらゆる切り口を考えて取り組みます。
それから予算の決定権は議会ですが、予算の編成権・提案権は市長にありますから、市長に予算提案してもらえることを目指しました。
「国が言いはじめる」と自治体も動きだすのは当たり前ですが、それ以前に市民の声を聞いて、実行にうつすことは大切ですよね。未来の子供達にとって、手遅れにならないために・・・!
でも、松山市で決まっている予算を大きく動かすのはたやすいことではないというのは・・・私でもなんとなく分かります。
子どもの医療費無料化を求める話は、通院費の支払いも負担が大きい家庭が多いこと、選ばれる自治体になるために必要な施策であることなど、議会で訴えました。他の多くの議員からも、同意見が出ていて、必要性については、かなり早い時期に議会の大多数の合意ができていました。
けれども、8億円あまりの予算を確保する調整に時間がかかりました。
8億ですもん・・・それは時間かかりますよね。
どんな根拠を集めて、合意をつくっていったのですか?
実施している自治体がどれだけあるか、
実施している自治体では、どんな効果があるか、
優先順位が高い施策である理由、
多くの親子が救われる施策であること、
子どもへの税金の使われ方(児童福祉費)が中核市の中での比較では松山市は低いこと。
県の補助率を上げる要望することを求めること、
市長公約である施策として実現の意欲や時期を問うなど。。。
議会毎に注目の議論になるよう発言すること、などなど、思いつく限りです。
これだけの事例を集めるだけでも一苦労ですね・・・!
そんなみえさんの努力のおかげで、子ども医療費の無償化が叶ったんですね。
私が、動かしたというのは違います。みんなの意思です。
多くの議員さんも、早期の実施を望む発言をしました。
なるほど。
たくさんの議員さんが望んでくださったんですね♪
先行していた自治体と比べると、ずいぶん遅れて実施となりましたが、実現して、本当に良かったです。
うちにも小学生の息子がいます。
安心して病院に行けるので、本当に助かりました!
子どもたちの喘息で通院している頃に、医療費助成の必要性を痛感していて、議員を目指すきっかけにもなった施策です。
わが子は3か月だけ利用できました。
子育て中の方々に、喜んでいただける仕事が出来て、嬉しいです。
子ども政策に新たな予算は難しい?
ちょっと前まで、子どもの世話に関することは、ほとんど家庭の責任でした。
そうですね。「子どもの教育は、親の責任だ!」とか、よく聞いた気がします。
教育は別ですよ。それから、保育に欠ける子どもの措置としての保育園とか、母子家庭は収入源がないだろうとのことで手当てとか、児童養護施設、障碍児支援、そのくらいまでです。
教育に関しては社会的な支援があるけれど、子育てに関しては親の責任・・・そんな時代だったんですね。
日本において、全国レベルで実質的な「子育てを支援する」ための事業が開始されたのは、平成6年のエンゼルプラン策定ごろからです。
その後、少しづつ「子どもは社会で育てる」という言葉が使われるようになりました。
なるほど。今ではよく聞く言葉ですよね。
けれど具体的には、まだまだ、子どもは、育つ家庭次第の部分が大きいし、一般家庭では、子育ての保護者の負担はとても大きいですよね。
はい・・・。それはもう。
ワンオペ育児も多いですし、みんな苦労している印象があります。
20年前くらいに始まった「子育て支援」政策の歴史ですから、子ども支援の施策や、子どもの為の予算が少ないのも、当然なのかもしれません。
「子育て支援」に関しては、まだまだ歴史が浅いんですね。
それに、保護者ががんばって子どもを成長するまで面倒みるのは当然のことだと、ほとんどの人が思っているはずです。
思ってますね!!!
みんな無理してますね(笑)!
「その負担と責任が持てる覚悟とキャパでしか、子どもをもうけてはならない」と、はっきり口には出せないけど、多くの人は考えていると思います。
絶対に思ってますねっ!
自分に、子どもを成人まで育てられる経済力はあるのか?
身体は大丈夫なのか?
年齢的にはどうなのか?
仕事と両立できるのか・・・・。
基本的に、全部、親である自分でやらなきゃって思ってますね。
だから、「スクールソーシャルワーカー」とか、「家事代行(ヘルパー)派遣制度」とか、「子ども部の創設」とかいう話は、ピンときてもらいにくいのかも。
ピンとこないです。
スクールソーシャルワーカーは、みえさんに聞いてはじめて知りましたし、「家事代行」はリッチな人しか使えないイメージ。「子ども部」に関しても、みえさんからはじめて知りました。
それと、やっぱり政治って、道が便利にキレイになったり、カッコイイ建物が出来たり、経済が活性化するイベントとか、そんなことがんばりました!って言う方が、分かりやすいし、評判よくアピールできるから、そっちに意識が行きがちなるんだなって思います。
たしかに。
「まちづくり」とか「観光」の面で、変化が起これば
松山市全体がよくなったように感じてしまうかも。
行政に解決してもらいたい課題がたくさんあるなかで、子どものためのことを最優先した方がよいとは、なかなか思えない人が多いんだろうし、
それから、どうしたら上手くいくか、解決するかもよく分からないので、子どものための予算を、こう確保しようと言える人は少ないんだなと思っています。
なるほど・・・それもそうですね。
未来のことを考えると、とっても大切なことなんですけれどね。
子どものことは家庭の責任から、社会の責任へ
夫婦が望む人数の子どもを生んで育てるためには、
①幸せに成長、自立できるまでにかけられるお金
②お世話する家事育児の労働力と時間
③家事や子育てスキルと、情報
④友達や仲間とのコミュニケーションの場
⑤パートナーとの良好な関係
こんなことが家庭に必要だけど、
どれもが十分にある家庭ばかりじゃないでしょう。
ここまで、そろっている夫婦はそうそういないんじゃないでしょうか・・・(笑)
社会で子どもを育てるって言うのなら、
生んだ保護者に任せっきりにするんじゃなくて、社会でもこれらの必要なモノコトを準備しなきゃ、言ってることと違うよね。
せめて、それらが足りない家庭には、
これらを補うように環境整備したり、手助けの策を考えたりするもんじゃないかなって思うんです。
それが助かります!
特に、子どもを生んだ女性には、
①家事育児で、自分の時間がとれない。
②仕事(社会)復帰と家庭との両立
③子どもにかけられるお金
この3つの心配や不安が、大きいんじゃないかな。
この3つは特に不安ですねっ!!!!
これらの心配は不安が減れば、子育ても楽しい、子どもが可愛いって、もう一人とか二人とか生みたいって人も増えるでしょ。
たしかに・・・ごもっともです。
もっともっと、家庭でするべきって思われていることも色々助けてもらえるように、子育て支援のメニューを広げていった方がいいと考えてます。
いいですね!
「○○するべき」という義務が減っていけば、もっと気軽に、楽しく子育てができそう。
例えば、
夜、パートナーや友人と食事に行くときにも、月に何回かは、子どもを預かってもらえるとか、病気になった子を学校や保育園に迎えにいって看病してもらえるとか、
掃除や洗濯、料理など家事を手伝ってもらえるとか、
子どもの保育園や塾の送迎をしてもらえるとか、
子どもとの遊び方を教えてもらえるとか、
産後の体調を整える運動や整体など、
ママ経験者だったら、こんな援助があったらなんていうアイデアは、
いくらでも、思いつきますよね・・・
夢のようなプランですね・・・(笑)
こういったことが、気負いなく助けてもらえる環境なら、リフレッシュしながら子育て楽しめそう!!!!
どれも、親せきや友人に頼れるとか、
お金を払えばできることかもしれないけど、
私は、どんな保護者でも、こういう手助けが受けられる社会になってほしい。
実家が遠いとか、助けてもらえる人が周りにいないとか、いろんな環境の人がいますもんね!
それから、女性活躍って言葉にも注意しないと。
女性の地位向上には大賛成だけど、「社会で活躍できていない自分はダメ」「輝いていないとむなしい」など、家事育児に追われるママを苦しめる危険があります。
あぁ・・・・そんな風潮ありますね、今。
自分の好きなことを見つけて、活躍してないとダメ!みたいな。
ちょっと前まで多くの女性がそうしてた「子どもや家族の世話や家事などに丁寧に時間を使って、地域や保護者会などのお世話をする暮らし」には、もうあまり幸福感や満足感を感じない人が増えているかもしれません。
専業主婦が引け目を感じてしまう・・・そんな圧力は感じています。
子どもの世話している時間は、子どもに向き合うしかないのに、仕事のことばかり考えていて上の空では、こどもは寂しいでしょう。
誰でも一日24時間しかありません。仕事と育児の両立なんて、そんなに簡単じゃないです。
すんごく、よく分かります。
正直、私も仕事が好きすぎて、子どもにちゃんと気持ちを傾けられているか不安です・・・。
私たちは、「人に迷惑をかけてはいけない」と教育されて育っているから、一人で抱えて頑張ってしまう。
「助けてもらうこと」は、全然恥ずかしい事じゃないのに、申し訳なさや、みじめさを感じてしまいがち。助け合いって言葉は知っていても、自分が助けてもらうイメージは、あまりしてないでしょ。
私にも、そんな気持ちあります。
基本的に、「助ける」のはいいことだけど、「助けられる」のはダメって思ってますね。
現代は、友達も祖父母たちの生活も色々忙しいし、考え方や事情も様々だから、ちょっと頼むのも気を遣うでしょうし、引き受けることが難しい人も多いはず。
いくら身内でも気を使いますもんね・・・。
何かお返ししなくちゃっていう気持ちになっちゃう。
そうそう。だから、家事や子育てを上手く助けてもらえるように社会で仕組みを用意しておく必要があるんです。
仕組み化されていたら、気が楽になりますね。
助けてもらうのは、悪いことじゃないって思えそう!
行政がリーダーシップと税金を使いながら、社会で子どもを育てる仕組みを作っていくしかないと思っています。だから、議会でも言い続けるつもりです。
次回は、「政治とお金」第二弾!
みえさんはどうやって、財政について学んでいったのか。戦略は??
私が個人的に聞きたいことを取材しました。
お楽しみに♪